SEIJI SHIMAOKA「邂逅するアート」
- TANPENS 編集室

- 2024年5月7日
- 読了時間: 3分

ある日の午後のF・K・ディック
一目見て心につきささるものがある。
僕は仕事がひと段落すると必ずすることがある。それは「なにかいい展覧会あるかなあ」と神戸にあるギャラリーのサイトを巡回することだ。その日見たのは神戸北野にあるギャラリーブリコラージュのサイトで、そこにあった画像に一瞬にしてひきこまれた。個展のタイトルは「『MESSAGE of VALIS』 Vast Active Living Intelligence System」。SF作家F・K・ディック(代表作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』映画『ブレードランナー』原作)が自身の神秘体験をもとにした名作「ヴァリス」を引用している。作家の来歴を見て見ると理工学の最高峰マサチューセッツ工科大学を出ている。
画面越しの作品を小説『ヴァリス」の「救世主を失った主人公」のように見つめる。作品は沈黙している。作品が語りだすまでただ待ち続ける。この作品を見た前と後ではおそらく僕は違う人間だ。
「なんだ、これは。なんだこのひとは」そう思って取材を申し込んだ。
作家の島岡誠二さんは背が高く、第一印象は「とても存在感のある人」だった。だが僕の取材の申し込みに「とてもうれしいです」と破顔して出迎えてくれた様子はとても気さくで人懐っこい温かみがあった。
二人で作品を見ながら「ハヤカワのSF文庫のカバーにあいそうですね」というと、彼はディックの話をはじめた。やはりそうかと確信した。僕はあえて作品の解釈などをきくのをやめた。作品と向き合いそこからメッセージを受け取ることが礼儀であり、その空間こそが島岡さんが作りたかったアートだと思ったからだ。それにこの作品にはずっと対面するに足りうる「質」と「量」と「時間」と「労力」と「想い」が込められていることは一目でわかる。
アートは邂逅
アートは邂逅だと島田さんは言う。それを見た瞬間「ガツンと」ときて深いところまでつれて行ってくれるのがホンモノだ。島岡さんにとってホンモノとはレオナルドダヴィンチであり、坪井一男であり、鴨井玲であって、そして京都で出会ったひとりの美術教師の作品だった。
マサチューセッツ工科大学を卒業した後、島岡さんは京都の友禅の染色のアルバイトをはじめた。彼の後にひとりの美術教師が入ってきた。そのひとが「個人的に自分も絵を描いていて、喫茶店で飾ってもらってるんですよ」といって一枚の写真を見せた。その絵をみて、彼は「ああ、自分も絵を描こう。絵を描いて生きていこう」そう思った。
「その絵がとてもよかったんです」
独学で勉強した彼は単身日本を脱出する。
はじめての個展はフィンランドだ。そのとき地元の新聞が「日本人が個展をするぞ」ということで小さなコラムが掲載された。それを見たのか、島田さんの個展に当時のフィンランド王妃が訪れ作品をコレクションした。作品を売ったお金は「最低限の生活費と絵具代があればいい」と孤児院などに寄付しながら、世界各国放浪を続けた。「そんなことできるの若い時だけですけどね」と笑うが、そのあいだいったいどれだけのものと「邂逅」したのだろう。
インタビューはつきない。彼の出会った素晴らしい作家たちの話が続く。アートだけではなく、映画、文学と彼の学識は広く深い。
「つぎ、このシリーズから派生した作品をつくっていきたい」と島岡さんは今後の抱負を語る。今度はいったいなにを見せてくれるのだろう。そして僕になにを会わせてくれるのだろうか。楽しみでしかたがない。
SEIJI SHIMAOKA
1957 大阪市福島区生まれ
1978 東京外国語大学卒業
1983 マサチューセッツ工科大学卒業
独学で絵画芸術制作に取り組みはじめる。心の師はレオナルド・ダ・ヴィンチ
以降、国内外で企画個展を開催する



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