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UZUー変身するために、踊りはじめた

  • 執筆者の写真: TANPENS 編集室
    TANPENS 編集室
  • 6 日前
  • 読了時間: 3分

 

人はときどき、べつの誰かになりたくなる。


 いや、ほんとうは「べつの誰か」になりたいのではないのかもしれない。うまく言葉にできないまま胸の奥にしまいこんできた、自分のなかのまだ見ぬ輪郭に、いつか触れてみたいだけなのかもしれない。

 UZUさんの話を聞いていると、そんなことを思った。

 もともと引っ込み思案で、人見知りだったという。幼いころには入院も経験し、学校に戻ったときには、すでにクラスの輪ができあがっていた。みんなが当たり前に身につけていくものを、自分だけ少し遅れて覚えていく感覚。そこには、うまく馴染めない者だけが知る時間の流れがある。

 だからだろうか。UZUさんは小さいころから、変身する者たちに惹かれていた。戦隊もの、映画、ミュージックビデオ。画面の向こうで、まるで別の存在になってゆく人たち。言葉では説明できなくても、その姿はたしかに胸を打った。自分もこうなりたい、とまっすぐ願ったわけではない。ただ、その光景に憧れていたのだと思う、と彼は言う。


 その憧れが、ある日ふいに現実へ降りてきた。


 カフェバーで隣に座った人から、ポールダンスを勧められたのがきっかけだった。こんな偶然でもなければ、たぶん自分から飛び込むことはなかっただろう、とUZUさんは振り返る。だが、やってみると楽しかった。画面のなかの出来事だったはずの「踊る」という行為が、急に自分の日常の手触りを持ちはじめた。遠い世界だと思っていたものが、ほんとうはすぐ近くにあった。そのことが、彼にはうれしかったのだと思う。

 おもしろいのは、踊りはじめてから変わったのが、舞台の上だけではなかったことだ。人との会話が変わり、誘いへの返事が変わり、世界への身の投じ方が変わった。何かをやる前から尻込みするのではなく、まずやってみる。そこから決める。そんなふうに、日常の思考まで少しずつ踊りに引っぱられていった。

 UZUさんは男性的な踊りも、女性的な踊りもしたいと言う。どちらかひとつではなく、そのあいだを行き来したいのだろう。けれどそれは、器用に何でもこなしたいという話ではない。むしろ逆で、さまざまな姿に化けながら、その奥にある「自分にしか出せないもの」を見つけたいのだと思う。



 話を聞きながら、変身願望という言葉の意味が、少しだけ変わった気がした。別人になることではない。何者にもなれる身体を手に入れることで、ようやく自分の輪郭に近づいていくこと。踊ることによってUZUさんは、自分を消しているようでいて、じつは少しずつ、いちばん深いところの自分を掘り当てているのかもしれない。


 そしてたぶん、いい踊りとはそういうものなのだ。形を見せるだけでは終わらない。見た人のなかに何かを残し、その前と後とで、ほんの少し世界の見え方を変えてしまう。

 UZUさんはいま、ただ踊れる人ではなく、誰かの心に小さな事件を起こせる人になろうとしている。その途中にいる人の話として、このインタビューはとても美しかった。

UZU / Dancer

兵庫県神戸市出身。

販売業を生業としていたが、2018年より神戸を拠点にフリーで活動中。

ポールダンス、コンテンポラリーダンスをはじめ、

ライブペイントやDJとのコラボパフォーマンス、様々な分野を交えて多数のイベントで参加。

2022年より関西/関東圏テーマパークでのパフォーマンス/アクター出演、ポートレートモデルや映像作品の参加など、今なお活動の幅を広げている。

骨格や外見、佇まいのジェンダーに捉われない狭間の美しさを探り即興の振りやポージングで表現。


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