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商店街がつくった大衆演劇場 明石ほんまち三白館

  • 執筆者の写真: TANPENS 編集室
    TANPENS 編集室
  • 2024年1月6日
  • 読了時間: 5分

明石には商店街が作った大衆演劇場がある。その名も「三白館」。大衆演劇場がある商店街は全国にいくつもあるが、商店街みずから小屋を作り運営しているのは「ほんまち商店街」の「三白館」ただひとつだ。

 今回の特集ではこの「三白館」ができるまでの経緯とその魅力について設立に尽力した富士の山菓舗(富士せんべい)の原田貞さんにお話をきいた。


◆ 三白館ができるまで


 今から十年ほど前、明石は生まれ変わろうとしていた。明石駅周辺の活性化のために市がいろいろな計画を立ち上げた。ほんまち商店街もその渦中にあった。

「なにかしないと取り残される」

 そんな危機感があった。

 アーケードの老朽化など当時の商店街には多くの課題があった。特に必要だったのは人の流れを南に向けるためのランドマーク的な存在だ。

「ほんまち商店街」は旧西国街道沿いにあり、明石城の城下町として栄えた。また戦前は市役所や兵庫電気鉄道(現在の山陽電鉄)の明石駅がすぐそばにあり、ひとの往来が絶えなかったという。まさに明石の中心地であった。だが時代は流れ、都市計画の変更によって人の流れは変わっていった。明石海峡大橋が開通するまでは、淡路と明石を結ぶ主要交通手段は明石─岩屋間だけだった。ところが大橋が開通すると乗船客の多くがJR舞子駅(神戸市)を利用し、明石港における乗船客数は激減した。駅前の再開発が進んでも国道2号線が障壁となって南に人が回遊するのを妨げていた。商店街を活性化するためには、なにか集客拠点を作らなければならない。そこで考えたのが「大衆演劇」だった。


「なぜ大衆演劇なんだと不思議に思うかもしれません」と原田さんは言う。「でもきっといけるという確信はあったんです」

 原田さんは、毎年市内の商店街が連合で催す顧客感謝イベントを担当していた。ある年大阪から呼んだ大衆演劇の公演に招待したところ、会場から出てくる人はみな笑顔だった。「面白かった」「よかった」「元気になった」と数多くの声が上がった。

「ご招待は抽選だったのだけれど信じられないくらいの応募がくるようになったんです」

 原田さんたちが目をつけたのは商店街にあったレトロな成人映画館だった。もともと明石は演芸が盛んで芝居小屋や寄席がたくさんあった。その映画館も元は三白亭という劇場だった。楽屋も回り舞台もある。大衆演劇をするには最適だった。

 目算はあった。しかし、なにもかも順調だったわけではない。すべてが手探りだった。プロモーターの協力を得たが、商店街が大衆演劇を経営するなんて前代未聞のことだ。ほんとうに大丈夫だろうかと出演依頼に二の足を踏む劇団もあった。建物も想像以上に老朽化が進んでいて、改装というよりほとんど新築といってもいいくらい大掛かりな工事になった。実際動いてみると足りないものが多い。パソコンやロッカーなどは助成金の補助対象ではない。提灯を売るなどして協賛を募る。商工会議所、ロータリークラブなど様々な協力を得て、商店街の人たちが一丸となった。そして構想から二年と二か月、二〇一五年十二月にオープンすることができた。

 ふたを開けてみれば原田さんの予感は的中した。杮落しから大盛況。年間五万人の観客が訪れ、明石中心市街地の南のランドマークとなった。

 

◆ 生まれ変わった商店街


 大衆演劇は全国各地の劇団が入れ代わり立ち代わり公演するため、毎月新しい公演を楽しむことができる。一か月劇場に住み込み、町で暮らす。他の演劇と違って毎日違う演目を演じているのが特徴だ。関西、特に播州エリアには、当時新開地にしか大衆演劇場がなかった。そのため小野や三木、姫路といった市外エリアからもリピート客が来場した。また各劇団のコアなファンが、全国各地から本町に訪れる。かつての賑わいが戻ってきたようだ。その効果は計り知れない。経済的な面はもちろん、精神的な面も大きいだろう。三白館は商店街の顔になったように思える。店頭には劇団のポスターが貼られ、商店街の公式サイトも三白館が前面に押し出されている。新しいお店も増え、以前よりもずっと明るい。古く歴史のある商店街というだけではなく、「劇場のある商店街」としてほんまち商店街は生まれ変わった。


◆ 三白館の魅力


「大衆演劇はほんとうに面白いですし、楽しい」

 公演は昼夜の二回公演。歌やお芝居、ショーが見られ三時間たっぷり楽しむことができる。前述したとおり、毎日演目が変わるので何度も見に行こうと思える。

「一度見に来てください。そしたらその良さがわかるから」とみな口をそろえる。

 公演の内容が面白いことが一番だが、それ以上に商店街が町ぐるみで運営しているのが三白館の最大の魅力だろう。「劇団ファースト。お客様ファーストでやっているんです」と原田さんは言う。

 コロナ禍で厳しくなったが、最終目標は商店街に再投資することだ。三白館が盛り上がれば盛り上がるほど商店街は魅力を増す。商店街が発展すれば三白館を目当てに来場した人はさらに楽しめることになる。ひとの往来が増えればさらに三白館に人は来るだろう。まさに三位一体だ。そんな未来を描いている。

 演劇場が商店街のものであることは劇団にとっても幸せなことだ。劇場に来る観客だけが劇団を歓迎しているのではない。商店街そろって劇団を歓迎してくれるのだ。こんな幸せなことはない。必要な小道具は松下人形店の主人が、大道具は吉川工務店の社長さんが作ったりしている。こんな劇場ほかにはない。オープン当初来ることを戸惑っていたが今では「ぜひ三白館でやりたい」という劇団が多いのもうなずける。

 来年三月には百公演をむかえる。

「なにか面白いことをやろうと思っています。楽しみにしていてください」と原田さん。

 ぜひこの機会に三白館に足を運んでほしい。



取材・文 TANPENS編集室


明石市本町1-14-18 TEL:078-911-0389

営業時間: 11:00~21:00

昼の部: 12:00~15:30 夜の部: 17:30〜21:00

休館日:不定休 月末は劇団入れ替わりのため基本的に休館となります

入場料:大人2,500円 子ども1,000円

※最新の情報は三白館公式サイトよりお確かめください。

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