第1話「ボクはアカシゾウ」
- アケボノくん

- 2025年6月20日
- 読了時間: 3分

ボクはアカシゾウ。
約二〇〇万年前に、ここ明石で活動していたゾウだ。今年の春に長い眠りから目覚めたばっかりなので、自分のことだけど、よく覚えてないんだ。だからボクのことをよく知っている人にきいてみよう。誰かいないかなあ。あ、あんなところに明石市立文化博物館の稲原さんがいる。おーい、稲原さーん。
「どうしたんだい?」
稲原さん、目が覚めたら明石の様子がおかしいんだ。
「ハハハ。そりゃそうだよね。キミたちがいたころ、日本列島は今とはずいぶん違っていて、瀬戸内海は大きな湖で、明石はそのほとりだったんだ。草原が広がっていてね。キミたちゾウの群れが水をもとめて集まってきたとされているんだ。」
そうだった! ボクも水を飲みに大きな湖によく行ってたよ。
「ちょっとこっちに来てごらん。」
え、これは、もしかしたらボクの骨?
「キミの骨かどうかはわからないけれど、キミの仲間、アカシゾウの骨だよ。足が短くて、牙が長いのが特徴だね。」
うん、この長い牙はボクの自慢なんだ! でもこれ、どうやって見つけたの?
「これはレプリカなんだけど、手前が昭和三五年に明石の西八木の海岸で、当時中学生だった紀川晴彦少年が発見したものなんだ。六年かけて、ひとりで発掘したんだよ。」
えええ、すごすぎる!
「奥にあるのが、神戸の西区で地下鉄の工事中に見つかったものなんだ。よく見てごらん、違いがわかるかな?」
奥のほうが少し大きいね。
「うん、そうなんだ。どちらも六〇歳くらいのゾウだとわかっているから、これだけ個体差があるとしたら、奥がオスで、手前がメスなんじゃないかって考えることができるよね。」
ボクのパパとママも、こんな感じで並んで歩いていたのかなあ。
「かもね。キミたちがどんな生活をしていたかは、まだまだ謎が多いんだけれど、足跡の化石から群れで行動していたのは間違いないと思うよ。」
明石にはボクの仲間がいっぱいいたんだね。
「化石もたくさん見つかっているしね。漁師さんが底引き網漁をしていると、ときどきアカシゾウの化石が網に引っかかることがあって、大事に飾ってたりしていたんだ。」
飾ってくれてたんだ! うれしいなあ。でも稲原さんは、どうしてボクたちのこと詳しいの? 稲原さんも二〇〇万年前から蘇ったの?
「それはね、考古学を学んだからだよ。」
コウコガク?
「化石や遺跡を発掘して、昔はどんな世界だったんだろうと研究する学問なんだ。」
面白そう!
「面白いよ。過去を探求するというのは、自分たちがどこから来て、どこへ向かっているのかを考えるってことだからね。」
ロマンだね!
「興味があるなら、また博物館においでよ。ほかの学芸員さんも紹介するよ。」
ほんと?
「でもそうすると、いつまでも『キミ』じゃ不便だね。名前をつけないとね。せっかくだから、みんなに考えてもらおうか。」
うれしいなあ。いい名前、つけてくれるといいなあ!



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